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LA直送!海外ドラマやじうまレポート詳細

Vol.35 スタジオ見学で、あのエミー賞受賞作の世界に浸る!?

2007年10月5日
まずは、「やったー!」と言いたい! というか、本当に自分はエミー賞の授賞式をテレビで見ながら、思わず『Heroes』第一話のマシ・オカばりに「やったー!」と叫んでしまった。というのも、わたしが昨年9月から熱視線を送り続けてきたドラマ『30 Rock』が、コメディ部門作品賞をみごと射止めたからだ!!!(ドラマの詳細に関しては、同コラムのVol.31を参照) 


関係者たちの間では、「マニアックなまでの愛情と、職人的な意匠を凝らした良質作品」(一部、わたしの主観による意訳あり)という評価を集めていた同タイトルだが、リアリティショーが持つさもしさやエキセントリックさに慣れた昨今の視聴者達には物足りなかったらしく、視聴率は常に低迷。打ち切りも心配された状況だっただけに、今回の起死回生の快挙に、どうして叫ばずにおられましょうか! 主演かつライターかつプロデューサーでもあるティナ・フェイは、授賞式の場で涙ぐみながら(ウソ)「毎週楽しみに見てくれている、何十人ものファンに感謝したい」と挨拶したが、私もこの、何十人という熱狂的ファンの一人なのである。彼女の言葉を何十人かでシェアしているのだから、一人あたりが受け取る謝意の濃度も濃かろうというもの。何はともあれ、この受賞が追い風となり、今年は視聴者数でも健闘してくれると嬉しいのだけれど……。

【『30 Rock』の収録現場、ロックフェラーセンターに潜入!】
と、そんな風に頭のネジが緩んでしまいそうなまでに『30 Rock』が好きなワタクシは、その物語の舞台となるニューヨークやロックフェラーセンターに対しても、畏敬の念に近い思いを抱いている。それだけに、先日ニューヨークに行き、ドラマの収録現場であるロックフェラーセンターを見たときには、皇居に向かい手を合わせる上京してきたおばあちゃんのように、神聖なる気持ちで胸がいっぱいになった。

もう一度おさらいしておくと、『30 Rock』とは、NBCのテレビ番組制作現場を舞台とした、セルフ・パロディ的コメディ作品。実際に同ドラマはスタジオが入っているロックフェラーセンターで収録されており、だからこそドラマのタイトルも、スタジオビルの住所である「30 Rockfeller」にちなんでいる。ちなみに、ニューヨークが舞台のドラマというと『フレンズ』が有名だが、『フレンズ』の収録はロサンゼルスのスタジオで行われているので、ニューヨークとは無関係。ロサンゼルスから来たわたしがニューヨークを見て、「これがフレンズの舞台か~」と感慨に浸る理由は、ビタ一文ないのである。一方、『Sex and the City』は、ちゃんとニューヨークで収録されている。


さてさて、そんな風に本当にロックフェラーセンターで収録されている『30 Rock』では、スタジオ周りの日常風景がドラマ内でも象徴的に描かれている。そしてその中でよく登場するのが、「スタジオ見学ツアー」の模様だ。番組スタッフたちが慌しく仕事している殺伐とした空気の中、「これが、人気番組○○を収録しているスタジオですよ~」と解説するガイドに連れられて観光客たちが練り歩いていく訳だが、このスタジオツアー、ロックフェラーセンター内で実際に行われていたのである!(そういえば、お台場のフジテレビでもスタジオ見学ができるっていうのがあって、昔社員旅行で行ったなぁ……)  お値段の方は$18とちょっとお高めだが、それで実際に日々番組が収録されているスタジオを見学できるのだから、テレビファンにとっては払う価値あり。なお、どの番組のスタジオが見学できるかはツアー直前で決まるらしく、チケットを購入する段階では判別していない。さらにわたしが行ったときは、スケジュール等の都合で1つのスタジオしか見学できないとのことで(通常は2つ)、$13に値下げされた。

【ペイジたちに連れられて、いざ、スタジオ見学に!】
スタジオ見学ツアーは、ギフトショップの2階からスタートする。ここには、NBCの歩みを語るパネルや展示物、そして過去のテレビ番組を流すモニターなどが並んでおり、まずはここで、“テレビ史”を簡単に学習。ケネディ暗殺の際の模様や人類初の月面到達の映像もあり、テレビというメディアが、歴史の証人として果たしてきた役割の大きさに胸を打たれてみたりもする。

そこで10~20分ほど時間をつぶしていると、“ペイジ”と呼ばれる、テレビ局スタッフ見習いのような二人組がやってきて、スタジオ見学ツアーのスタート! 一度のツアー参加者人数は10人弱で、わたしは初老の夫婦とスコットランドからやってきた若者4人組、そして学生の男性一人と一緒だった。ちなみに、先述の“ペイジ”に関して少し話をすると、この人たちはテレビに対する憧憬と熱意にあふれた若者たちで、日本で言うところのADのような身分なのでしょうか? ペイジの証である青いジャケットに身を包み、受付からスタジオ見学ツアーのガイド、そして撮影現場でのお手伝いと、あらゆる所で忙しなく働いている。もちろん、ペイジからスターに出世する人たちも多いらしく、例えば『The office』のヒットで一躍著名俳優の仲間入りを果たしたジョン・クラシンスキーも、元はNBCのペイジだったそうだ。

わたしたちのツアーを担当してくれたペイジは、白人の若い女性二人。ツアーを楽しく盛り上げるためジョークを言ったり、スタジオでは実際に用具を使って簡単な撮影レクチャーもしたりと、ところどころ滑りながらも頑張ってくれていた。もし将来、彼女たちが自分の番組を持つようになったり、あるいは女優としてドラマに出演していたりしたら、ちょっと胸が熱くなるだろうと思う。もう、顔もさっぱり覚えてないけど。

そんなこんなでワタクシは、『30 Rock』内でスタッフたちにちょっとウザがられているツアー参加者の一員となり、ニュース番組制作現場をのぞいたり、メイクアップルームを見学したり、そして『Today Show』というモーニングショーのスタジオを徘徊したりしてきたのでした。


また『30 Rock』内の話になってしまって恐縮なのだが、このドラマの主要キャラクターの一人に、明るく礼儀正しく、そしてどんなに不条理な命令に対しても従順なペイジが居る。そんな彼が、あるとき上司の一人に「どうして君は、こんな辛いばかりで非生産的な仕事をしてるんだ?」と聞かれる。
ペイジは答える。「それは、ボクはテレビが大好きだからです! アメリカは歴史が浅く、文化がないと批判する人が居るけれど、テレビは常にボクらと共にあり、生活を豊かにし、そして進化してきた。ボクは、テレビこそが、アメリカが誇る文化だと思います」(一部うろ覚え)と。

たった数時間のことではあるが、スタジオ内を見学してテレビ業に従事する人々に触れ、テレビとこの国が歩んできた道程を見たことで、ドラマ内のあのセリフも、あながち大げさでは無いのだなと思わされた。