４人の俳優が12年間にわたり家族を演じた感動の物語「６才のボクが、大人になるまで。」本編が２時間45分もある理由とは？

「恋人までの距離(ディスタンス)」から始まるビフォア・シリーズで知られるリチャード・リンクレイター監督最新作にして、最高傑作との呼び声も高い映画「6才のボクが、大人になるまで。」が、11月14日(金)より公開となる。

2014年2月、第64回ベルリン国際映画祭で上映されるやいなや世界を驚かせた「6才のボクが、大人になるまで。」。同映画祭でリンクレイター監督に2度目の監督賞(銀熊賞)をもたらした本作は、6歳の少年メイソンとその家族の変遷の物語を、同じ主要キャストで12年に渡り撮り続けた画期的なドラマだ。

あどけない少年から凛々しい青年へと成長していくメイソンを演じたのは、12年前にリンクレイターがオーディションで見出した逸材、エラー・コルトレーン。さらに、メイソンの母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターも、12年に渡りそれぞれの役の変化と成長を演じきった。

子供時代のパーソナルな感情や、表現しようもない微妙な経験を描きたいという監督の思いから始まった作品だが、子供時代と言ってもキャンバスは広く、監督自身、どこから始めるべきかはっきりわかっていたわけではない。しかし、やがて監督の中にひらめいたのは、あるひとつアイデア。「すべてを描いてみたらどうだろう?」

監督自身、そんなやり方が話にならないということは百も承知で、今日の映画産業のあらゆる常識に反するものと考えたが、だからこそ、監督は後先かまわずこの挑戦に飛び込んだ。

撮影と同時に編集も続けていたおかげで、最後の編集はすぐに終了。毎年撮影を進めながら編集をし続けることは「大変な仕事だったよ」と、監督は振り返る。当初予定していた本編時間は2時間だったが、出来上がった作品は2時間45分まで膨れ上がることに。予想以上の長さになってしまった理由を、監督は映画自身の意思だと語った。

「当初考えていたよりも上映時間は長くなった。元々は毎年10分で合計120分と見積もっていたんだ。だが1年目を終わって、そんなふうには行きそうもないことに気づいた。それで、その手の制約は取り払って、映画自身がなりたいようにならせることにしたんだよ。最終的には一種の叙事詩であると同時に、非常に単純で個人的なドラマになった」

ちなみに長年彼の弁護士を務め、これまで100本以上のインディーズ映画の製作を支えきたジョン・スロスは、返金保証ならぬ「返時保証」キャンペーンを発案。これは、「6才のボクが、大人になるまで。」が面白くなかったと感じた人に対し、2時間43分相当の家事を代行するというもので、このキャンペーンは大成功だったと誇らしげに語ります。

「実際のところ、「家事を手伝ってもらおうと楽しみにしていたが、残念ながら良心に従って連絡をするのをやめる」という反応が多かった。数人から庭の芝刈りをしてほしいという連絡がきたが、まだ時間が取れなくて」

12年分を詰め込んだこの2時間45分は、他のどの作品でも味わう事の出来ない長く短い旅となっておいる。

【動画】映画「6才のボクが、大人になるまで。」予告編



■ 公開情報

「6才のボクが、大人になるまで。」
11月14日(金)TOHOシネマズ シャンテ他にて公開

PG12
原題:Boyhood
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
出演:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホーク
配給:東宝東和
(c)2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.
公式HP://6sainoboku.jp/