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『スター・ウォーズ』レベルの壮大プロジェクト!暴虐ピンク映画の帝王・佐藤寿保監督、新作は邦画界への挑戦状

2016年4月25日
佐藤寿保監督 (c)TVGroove.com佐藤寿保監督 (c)TVGroove.com
毒々しくも美しい幻の花“華魂”。その出現をきっかけに、抑圧された人間の欲望や暴力性が花開く姿を描いた映画『華魂 誕生』から2年。シリーズ第2弾となる『華魂 幻影』が4月30日に公開される。シリーズ産みの親であり監督を務めるのは、“ピンク四天王”の一人として知られ、国内外問わず熱狂的なファンを持つ佐藤寿保。そんな佐藤監督が「テレビドラマの延長線上にあるかのような作品ばかりの日本映画界に対して不満がある」と、挑戦状として叩き付ける『華魂 幻影』とは一体、どんな問題作なのか。TVグルーヴの単独インタビューに応じた。

4部作構成としてスタートした『華魂』プロジェクト。佐藤監督は「それぞれが続編ではなく、“華魂”というキーワードを軸に、前作とは全く別の物語が展開する。最終的にはメビウスの輪のようになるだろうし、4部作が終わっても、“華魂”のテーマは広げていきたい。自分にとっては、死ぬまで挑むライフワークとなるはず」と『スター・ウォーズ』レベルの壮大プロジェクトである事を示唆する。構想は幼稚園時代からで「裏表がある大人社会の欺瞞に対する疑問や、仮面をかぶり自分を繕って生きる大人たちの姿にずっと疑問があった。未だにその疑問が自分の中にあって、“この世の中って何かおかしいぞ”という気持ちが今も消えない」と長年の追求テーマであることも明かす。

前作は、学校を舞台にイジメ問題を素材に選んだ。今回は老朽化し閉鎖が決まった映画館を舞台に、トラウマを抱えた映写技師と観客たちの包み隠された欲望が爆発する。「映画館に集まった観客たちが、抑圧されたものを解き放つ“華魂”の出現によって暴走する。その映画館で流れているメロドラマ映画『激愛』自体も“華魂”に毒され、映画館という空間自体が非日常の塊になる」。映画という虚構を映し出す場所が、“華魂”の出現により地獄絵図という非日常に変容する皮肉と同時に、単館映画館が閉鎖される現実への哀切もある。撮影では、取り壊し前の成人映画専門館の旧上野オークラ劇場を使用。「僕らのような人間にとって映画館の暗闇は隠れ場所であり、遊び場。今はその暗闇がどんどん滅びつつある。記録として作品の中に収めたいという思いがあった」。

主軸となるストーリーはこうだ。映写技師・貞一が、上映中の映画『激愛』の中に謎の少女の幻影を見る。その少女はフィルムから抜け出し、現実の姿として貞一の前に現れる。少女との接点となる忌まわしい記憶が呼び起こされた時、自らのトラウマと対峙した貞一は、映画館を巻き込む取り返しのつかない世界に足を踏み入れた事を知る。

謎の少女を演じたのは、これが映画初出演のイオリ。全裸シーンや強姦シーンにも果敢に挑んだ。オーディションでの抜擢だが、その時点での演技経験はほぼゼロ。「イオリは演技がしたいと田舎から上京した女性で、芝居は未経験。素人ではあるけれど、透明感とキラッと光るものがあった。内に秘めた少女性とは似つかぬ豊満な肉体の持ち主で、そのアンバランスさとギャップがキャラクターにピッタリだった」と起用理由を説明し「女優としても、出番が終わってもずっと撮影現場に残って吸収しようという意識があり、そこにも純粋性を感じた」と女優としての魅力も解説する。



佐藤監督は、瀬々敬久監督、佐野和宏監督、サトウトシキ監督と並んで、成人映画に新たな流れを作った映画作家として“ピンク四天王”とリスペクトされている。しかし佐藤監督の作家性は、他の3人の作風をはるかに凌駕する。犯罪者や強烈なトラウマを抱え、社会からはじかれたアウトサイダーたちへの共鳴を、スプラッター・ホラー映画に近い表現で見せつける世界観は、唯一無二のものだ。

佐藤監督は「スプラッター・ホラーというつもりで撮った事はなくて、どちらかというとホラー映画は怖くて苦手。好んで観た記憶はない」と衝撃の事実を口にしつつも「トラウマの抑制に対して、ボーダーを超えてそれを打ち破っていく人物像が好き。結果的にそれが犯罪行為に繋がるとしても。現実世界で実際にやってしまったら犯罪だけれど、映画は妄想だから、映画ならではの表現で、現実世界では出来ない事をしたい。暴力とエロは親和性があって、暴力描写は時として脳みそにエロ以上の刺激を与える。そういった部分をエレクトロさせるためには、時に笑いが起こるくらいの過激さも必要。自分にしかできない視点で映画を作るのは、自分の映画監督としての存在意義であり、作り手としてのスタンスでもある」と強烈な個性の源となる“核”を自己分析する。



今年は映画『華魂 幻影』に続き、7月には日米合作の『眼球の夢』、さらに年内にもう1本の新作が公開予定。2016年はまさに“寿保イヤー”といっても過言ではなさそうだが「時代が見えず、キャッチボールが出来なかった時期もあったけれど、今になって徐々に時代とのキャッチボールが出来てきているような感覚がある。ただこれまで“時代に惑わされてはいけない”という思いでやってきたので、キャッチボールではなく、トゲのついたボールでのドッチボールでありたい。返り血を浴びる覚悟はある」と、どんな状況であれ軸を譲る気はさらさらない。

この勢いでメジャー映画に進出し、シネコンのスクリーンを血染めにするのも夢だ。「メジャーだと色々とご意見もあり、作家性を発揮しづらい状況にはなるとは思うけれど、その反面、予算さえあればテーマもより広げられる」と気骨あるスポンサーを大募集中。気になる『華魂』第3弾の製作については「アイディアはすでにあるので、年内に着手できれば」と意欲を見せた。


(インタビュアー:石井隼人)
 
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