エミー賞2冠!全米で大人気のスパイドラマ「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」の見どころを町山智浩さんが徹底解説[イベントレポート]

「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」のシーズン1&2のDVDコレクターズBOXが9月5日にリリースされた。それを記念して、アメリカで9月17日に行われたエミー賞授賞式の直後である9月19日、FS汐留にて上映会&トークイベントが開催され、会場には大勢の海外ドラマファンが集まった。

「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」は、アメリカ人になりすましたロシア人のスパイ夫婦が、潜入、暗殺、ハニートラップなどあらゆる手を駆使したスパイ・ミッションと、彼らを追うFBIとの攻防戦をスリリングに描いており、第74回ゴールデングローブ賞では2部門にノミネートされ、第70回エミー賞では主演男優賞と脚本賞の2冠に輝いた。

シーズン1第1話の上映の後、この作品のファンでもある奥浜レイラさんのMCのもと、在米ジャーナリストで映画評論家の町山智浩さんがゲストで登場し、イベントは幕を開けた。



会場には、今回初めてこの作品を鑑賞した人も大勢。初心者のためにも、このドラマの特徴でもある個性が強いキャラクターたちについて、相関図を見ながらの解説が進められた。



物語の主役となるのは、20年以上前からアメリカに潜入し、ソ連のスパイとして生活をする妻のエリザベスと夫のフィリップのジェニングス夫妻。ふたりは元々赤の他人だったものの、任務の遂行のため結婚をした仮面夫婦。両親がスパイだということを知らない娘のペイジと息子のヘンリーとともに一家4人でワシントンDCに住んでいる。

「フィリップを演じるのはマシュー・リス。妻のエリザベスを演じるのは女優のケリー・ラッセルで、彼女はディズニーチャンネル出身で子役時代から活躍していました。マシュー・リスとは事実婚をしているので、私生活でもパートナーです。」と、メインキャラクターを演じる俳優の経歴や私生活も交えながら、町山さんの解説が始まった。

本作は、身分を偽るスパイが主人公であることから、騙し合いののちに人間関係がこじれていく様子も見どころのひとつだ。

「任務のためにフィリップがFBIのマーサという女性を誘惑して情報提供者に仕立てたり、FBIのスパイ狩りであるスタンが、たまたまジェニングス夫妻の家の向かいに引っ越してきたりと、とにかくドラマがわんさか溢れているんです。」

睡眠不足になりながらこのドラマを鑑賞したというMCの奥浜レイラさんも、「1秒ごとに変わっていく人間関係を是非楽しんでもらいたい。」とコメント。

80年代のアメリカとソ連の緊迫した状況の時に大学生だったという町山さんは、レーガン大統領就任後のソ連とアメリカの緊張が高まった1983年を中心に、レーガン大統領による「悪の帝国発言」やソ連のスタニスラフ・ペトロフがアメリカの核報復を防いだこと、核兵器実践使用の恐怖が描かれたTV映画「ザ・デイ・アフター」について、ホワイトボードを使いながらドラマの時代背景を解説した。



「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」は、元CIAのスパイが企画、製作総指揮をしていることも話題になっているが、ジェニングス夫妻のモデルになった夫婦が実在したそうだ。

「実際は10人くらいのKGBのスパイがワシントンDCに潜入していたと言われていますが、1984年リチャード・ミラー事件という事件が起こりました。FBIがソ連のKGBの夫婦に情報を売っていて、その後ミラーは逮捕されます。おそらくこの事件がモデルになっているのでしょう。」と、実際に起きた事件を挙げ解説をした。



スパイであるが故に起こってしまう家族トラブルの描かれ方については、次のように語った。「夫のフィリップと妻のエリザベスは任務のために結婚をさせられ、仮面夫婦として生活をしています。子どもも2人作らされますが、だんだんと任務よりも子どもが大切になっていきます。子どもを守るために人も多く殺すようになりますしね。」

「任務と言えども、奥さんが他の相手と寝ることを耐えられないフィリップは、『嫉妬はしないのか?』なんて妻に尋ねることがあるんですが、彼女は任務を遂行するために割り切っているのでなんとも思っていない様子なんですよ。」

「ところが、エリザベスが全く気にしていないのかというと、そんなこともない。フィリップと一夜を共にした相手に、『彼はどんなセックスをするの?』と聞き、後で嫌味ったらしく本人に伝えたりするんですよ。そんな痴話喧嘩も繰り広げられます。特に、シーズン4では夫婦喧嘩のシーンがあるのですが、『演技ではなくリアルに喧嘩をしているじゃないんじゃないか?』と思うほど、リアルに見えてきますよ!」と語り、会場は笑いに包まれた。



タイムリーな話題であるエミー賞については、「現在500本のドラマシリーズがある中、1位に輝くというのはかなりすごいこと。」と、本作のクオリティの高さを絶賛。

見事エミー賞2冠に輝いた本作だが、先日の授賞式でとある出来事が起こったそうだ。主演男優賞に輝いたマシュー・リスは壇上のスピーチで、「ある女性に『もし賞を取っても、その場で公開プロポーズなんてしないでね。もししたら、あなたをぶん殴るから。』と言われたよ。」と発言。

他のカップルがプロポーズをしている姿を見たケリー・ラッセルは、パートナーのマシュー・リスにそのように釘を刺したそうだ。

本作で共演してパートナーとなった彼らは、実生活でも同じようなパワーバランスであることが発覚。本作でも妻のエリザベスが主導権を握っているが、実生活でも同じことが起きているようだ。

残り時間もわずかになった頃、ツイッターで「#町山さんにこれが聞きたい」というハッシュタグで募集された質問を町山さんが回答。

6シーズンまで続いた人気の秘密は?という質問に対しては、「タイトルの『ジ・アメリカンズ』から分かるように、フィリップはソ連のスパイでありながら、実は相当アメリカナイズされています。彼はカマロなどのアメ車が大好きですし、魂を売りたくて仕方がない人。それに抵抗をしているのがエリザベス。観ている方が、後にソ連が崩壊することを知っているので、視聴者が結末を知っているドラマなんです。彼らがどのように生き延びるかが見どころですね。」と、このドラマが特殊な設定であることを述べた。

製作者はどのような作品に影響を受けているか?という問いに対しては、イタリア系マフィアとその周囲の人間模様を描いた「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」を挙げた。「愛する家族を守りながら、マフィアとして生きていソプラノ家の物語。内容だけではなく、作品の雰囲気も影響を受けている。」と語った。



トークイベント終了後、フォトセッション中にも町山さんの解説は続いた。ツイン・ピークスにおける第8話のような感動を感じる回があることや、緊迫したシーンの挿入歌にクイーンの「アンダー・プレッシャー」が使用されていたことなど、30分では語りきれなかった本作の豆知識がイベント終了間際まで溢れ出ていた。

「ジ・アメリカンズ　極秘潜入スパイ」シーズン1と2はセル&リリースともに9月5日に解禁されている。コレクターズ DVD-BOXには豪華映像特典が収録されているだけではなく、「シーズン1　オリジナルブックレット」も封入されている。更に、シーズン3以降はファイナルのシーズン6まで5ヶ月連続でリリースすることが決定。DVDコレクターズBOXには町山さんの熱い解説「シーズン1 パーフェクトガイド」も封入されており、見逃せない内容となっている。

(取材・文:加藤優花)

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【作品情報】

作品名:「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」
DVDコレクターズBOX 7枚組 各¥9,000+税
デジタル:デジタル配信中
発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

【シーズン1 収録特典】

・未公開シーン集
・NGシーン集
・大統領令2579号「ジ・アメリカンズ」の舞台裏
・華麗なる防諜のすべて
・テクノロジーを超えた知恵

「ギフテッド 新世代 X-MEN 誕生」第1話
「9-1-1(原題)」第1話、「THE RESIDENT(原題)」第1話
「THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから」第1話、「レギオン」第1話
「APB ハイテク捜査網」第1話、「セカンド・チャンス 造られた男」第1話

【シーズン2 収録特典】

・未公開シーン集
・NGシーン集
・諜報活動:S局の真実
・共産主義の影:スパイたちのモラル

新作ドラマの第1話を特別収録(シーズン1と同じ)

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