「マトリックス」監督が「クラウド アトラス」引っさげ来日! 「映像化不可能だからやってみたかった」

トム・ハンクス主演のSF大作「クラウド アトラス」のメガホンを握ったアンディ&ラナ・ウォシャウスキー監督、トム・ティクヴァ監督が来日。1月24日(木)に都内で開かれた記者会見に揃って出席した。

3人による共同監督という異例の体制で制作された本作は19世紀から24世紀までの6つの時代を生きる男の物語。それぞれの時代が交錯しつつ、最初は悪人でありながらも徐々に魂の進化を受け止め、やがて世界を救う存在となっていく一人の男の姿がつづられる。

ウィシャウスキー姉弟の来日は「マトリックス レボリューションズ」以来10年ぶり、ティクヴァ監督にとっては2006年の「パフューム　ある人殺しの物語」公開時以来、2度目の日本となる。各人ともこれまでに日本の映画や文化に強く影響を受けたことを公言しており、開口一番「コンニチハ!」と日本語で挨拶し笑顔を見せていた。

デヴィッド・ミッチェルによる原作小説は刊行以来「映像化不可能」という枕詞がついて回ったが、アンディは「よく聞かれる質問なんだけど、僕らの答えは『映像化不可能な小説などない』ということ」とニヤリ。ティクヴァも「それこそが魅力であり、チャレンジが私たちを惹きつけたんだ」と語り、ラナも「不可能だからこそやってみたくなるのよ」とうなずく。

キャスト陣はこの1本の映画の中で時代ごとに異なる6つのキャラクターを演じているが、ティクヴァは「俳優にとっては1本の映画で6人分の責任を負うというのは、ワクワクする経験であると共に勇気の必要な体験だったと思う」と称える。アンディは主演の重圧を担ったトムについて「彼は興奮し喜んでいたよ。普段の彼にはあまり来ないタイプの役柄だったからね。現場でも楽しんでいたよ」と明かした。

またラナは強欲な農場経営者の牧師から二枚舌の原発会社の社長など多彩なキャラクターを見事に演じきったヒュー・グラントに言及。「ヒューは普段、主役級の役ばかりを演じているけど、今回はバックグラウンドに溶け込むことを楽しんでいたわ」と語り「伝統的な慣例こそが私たちが最も嫌うもの。『マトリックス』と同じように、今回も新たなアプローチに取り組めた」とこれまでにない挑戦に胸を張った。

奴隷時代からクローン人間の存在する未来にまで様々な時代を盛り込んだ本作。監督するにあたって影響を受けた存在や作品について尋ねると、アンディは「原作の小説はストーリーテリングをテーマとしているけど、本当にいろんなジャンルが含まれている。僕自身の中にもこれまでに体験したいろんな物語や映画、美術などが蓄積されているけど、この映画はそれらの集大成と言える。そういう意味で(影響を受けたのは)全てだね」と語った。

ラナはこの壮大な物語の中で「差別や別れ、搾取や支配、破壊といったメカニズムや壁を超越する方法、愛が未来の扉を開く力を持っているということを描いた」と語り、ティクヴァは「この映画は素晴らしいオーケストラを聴きに行くような経験をもたらすと思う。トムは素晴らしいバイオリニストであり、ハル・ベリーがチェロを、ヒュー・グラントがトランペットを、ベン・ウィショーはドラムを奏でているんだ。そして見た後でいろんな思いが頭の中を駆け巡ることになると思うよ」と完成した作品への自信をうかがわせた。

 

「クラウド アトラス」公式サイト