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Vol.42 自分と家族の不幸を全国放送で笑い飛ばしちゃう「タイタス」

2003年6月17日
先月のエッセイでもちょっと書きましたが、今回は私の大好きなコメディ「タイタス」を紹介しちゃいます。現在、日本では第3シーズンが始まったばかり。FOXチャンネルで木曜24:00と金曜18:00に放送中です。私はこの番組の第1、第2シーズンの全話の字幕を担当させていただいたのですが、第3シーズンは翻訳スケジュールの関係で数人の翻訳者さんとの共同作業を行い、私は5本分の翻訳を担当しました。

実は、今シーズンで別の翻訳者さんが訳した「タイタス」を見ることを、私はすごく楽しみにしています。大好きな番組にもかかわらず、自分が訳しちゃうと、字幕が気になって落ち着いて見られません。「あー、ここはこう訳せばよかったなあ」とか、「ああ、こんな訳、ダメだ!」とか、とにかく冷や汗たらたら。今年、この仕事を始めて7年目を迎えた私ですが、放映を見るのはいまだにドキドキです。小心者ですねえ…。(^^;;)

この「タイタス」の主人公の名前はクリストファー・タイタス。カスタムカーの製造業を営む30代の男性です。ちょっぴりおマヌケな彼は毎日なにかと失敗ばかりで、仕事もなかなか軌道に乗りません。そんなタイタスを辛辣な言葉でコケにしまくる父親ケンは、なんと離婚歴5回の大酒飲みで、心臓病を抱えているくせにナンパやエッチが大好き。そして母親ホアニータは精神分裂症で目下入院中。マリファナ好きの弟デイブ(実は弟といっても、ケンの3番目の妻の連れ子で、タイタス、ケンとも血のつながりはナシ)は、いつまでたっても自立できず、いい年して父親のスネかじりを続けています。そんなタイタス家の中で最大の侮辱の言葉は"Wussy”。(「ウッシー」と読みます。“弱虫”とか“腰抜け”という意味です。) この家族は、どんな罵詈雑言を聞いても平然としているのに、この言葉を耳にすると突然烈火のごとく怒り出し、たちまち殴り合いに発展してしまうのです。そこへいつも仲裁に入るのが、タイタスの婚約者エリン。エリンは美人で頭の回転が速い女の子なのですが、ちょっと血の気が多いのが玉にキズ。タイタスとケンカすると、涼しい顔で彼の車を爆破しちゃったりするのでした。

この番組、何がすごいかって…すべて実話をもとにしているという点です。主人公タイタスの自伝的な作品であり、登場する家族や恋人の名前は実名、お父さんが5回離婚したのも本当なら、お母さんが分裂症で入院してるのも本当。ビールを飲んで寝てただけのお父さんを死んだと思い込んで大騒ぎするという、マヌケすぎるエピソードや、病院を脱走しちゃったお母さんがお父さんをナイフで刺し殺そうと追いかけまわすアブナイ話なんかも飛び出すのですが、そのほとんどが実際にあったことだとか。(「もちろん、番組では誇張して描いているんだよ!」とタイタス君はインタビューで言ってますが…。)

とにかく、この番組はブラックなユーモアが満載。たとえば、ある日突然結婚したくなったタイタスとエリンは、お葬式の準備をしていた教会に無理やり押しかけて赤の他人のお棺から花輪を借り、それをブーケ代わりに式を挙げようとします。さらにこのエピソードでは、なんと式の最中にキレたお母さんが同伴の彼氏を銃殺して中断という、とんでもないオチまで付くのです。また、タイタスの元恋人が亡くなって、昔彼女に手ひどく振られたタイタスがお棺に向かってケンカを売るというエピソードもあります。

死、離婚、家庭の崩壊、浮気、麻薬、アルコール中毒、心の病など、暗いテーマを扱いつつも、マヌケな展開で爆笑させてくれる「タイタス」。実名を出されてテレビで笑われる家族は、さぞや怒り心頭なのでは…と思いきや、実はみんな大喜びで番組を見ていて、「そうだ、こんな話はどうだ?」「いや、もっと笑える話があるぞ! おれを主役にした番組を作れ!」とうるさく提案するのだとか。

しかし、毎回ハチャメチャな展開ながら、人情味溢れるエピソードになっているのは、やはり主演と原案を担当しているクリストファー・タイタスの人柄なのでしょう。彼は決してイイ男ではありませんが、優しい目と笑顔が魅力的なコメディアンです。

本国ではもう放送を終了してしまいましたが、クリストファー・タイタスはもともとスタンダップ・コメディアンで、現在も生の舞台で活躍中だそうです。ネットで公演の予定を調べて、いつかステージ上の彼を見てみたい! と本気で思ってる私です。楽屋へ行って「私、あなたの番組の字幕を作ったのよ!」と言えば、サインぐらいくれないかしら!? ツーショットの写真ぐらい撮らせてくれるかな!?などと妄想をふくらませる今日このごろなのでした。

それでは、また!(^o^)丿